オンプレミス環境からAWSへ移行する際、複数のVPCと既存ネットワーク(カスタマールーターやファイアウォール)をどのように接続するかは重要な設計ポイントです。特にAWSでは、Virtual Private Gateway(VPG)を使う方法とTransit Gateway(TGW)を使う方法があり、どちらを選ぶべきか迷うケースがあります。
この記事では、複数VPCを持つAWS環境でオンプレミスと接続する場合の考え方、Transit GatewayとVirtual Private Gatewayの違い、一般的な構成パターンについて初心者にも分かりやすく解説します。
AWSとオンプレミスを接続する基本的な方法
AWSとオンプレミス環境を接続する場合、一般的にはAWS Site-to-Site VPNやAWS Direct Connectを利用します。オンプレ側にはカスタマールーターやファイアウォールを配置し、AWS側の仮想ネットワークと通信できるようにします。
以前は、各VPCごとにVirtual Private Gateway(VGW)を配置し、VPN接続する構成がよく利用されていました。しかし、VPC数が増えると接続管理が複雑になるという問題があります。
例えば、10個のVPCを利用している環境で、それぞれをオンプレミスネットワークへ接続すると、VPN設定やルーティング管理が大量に発生します。
Virtual Private Gateway(VPG・VGW)を利用する構成の特徴
Virtual Private Gatewayは、VPC単位で配置するAWS側のVPN接続用ゲートウェイです。1つのVPCとオンプレミス環境を接続する場合にはシンプルで分かりやすい方法です。
例えば、小規模なシステムでVPCが1つだけ存在する場合は、VGWを利用した構成でも十分対応できます。
ただし、VPCが増えてくると、それぞれのVPCにVPN接続設定を行う必要があります。そのため、複数VPCを統合的に管理したい場合には運用負荷が高くなることがあります。
AWS Transit Gatewayを利用する構成の特徴
AWS Transit Gatewayは、複数のVPCやオンプレミスネットワークを中央で接続するためのネットワークハブとして利用できるサービスです。
Transit Gatewayを利用すると、各VPCやVPN接続をTransit Gatewayへ接続し、そこから必要なネットワークへルーティングできます。
例えば、以下のような環境ではTransit Gatewayが適しています。
- 複数のAWSアカウントで多数のVPCを利用している
- オンプレミスと複数VPCを接続したい
- ネットワーク経路を一元管理したい
- 将来的にVPCが増える予定がある
複数VPC環境ではTransit Gatewayが一般的に選ばれる理由
複数VPCとオンプレミス環境を接続する場合、現在ではTransit Gatewayを採用するケースが多くなっています。
理由は、ネットワーク構成を中央集約できるためです。VPCごとに個別VPNを張る方式では接続数が増えるほど管理が難しくなりますが、Transit Gatewayでは接続先をまとめて管理できます。
例えば、開発環境、検証環境、本番環境でそれぞれVPCが存在する場合でも、Transit Gatewayを経由してオンプレミス側のファイアウォールと接続することで、統一したルーティング設計が可能になります。
Transit Gatewayを使えば必ず正解なのか
複数VPC環境ではTransit Gatewayが有力な選択肢になりますが、すべてのケースで必須というわけではありません。
VPC数が少なく、今後も増える予定がない場合は、Virtual Private Gatewayによるシンプルな構成のほうがコストや運用面で有利な場合があります。
また、Transit Gatewayは利用料金が発生するため、小規模環境では費用対効果を確認する必要があります。
オンプレFWとTransit Gatewayを接続する場合の一般的な構成
企業環境では、オンプレミス側にファイアウォールを配置し、そこからAWS Site-to-Site VPNまたはDirect ConnectでTransit Gatewayへ接続する構成がよく利用されます。
代表的な構成例は以下のようになります。
| 接続元 | 接続先 | 役割 |
|---|---|---|
| オンプレFW | Transit Gateway | オンプレとAWS間の通信経路 |
| Transit Gateway | 各VPC | VPC間通信やルーティング管理 |
この構成では、オンプレ側のセキュリティポリシーをファイアウォールで集中管理しながら、AWS側のネットワークも柔軟に拡張できます。
AWSネットワーク設計で重要なポイント
AWS移行時は、単純に接続できるかだけではなく、将来的な拡張性や運用負荷も考慮することが重要です。
特に確認したいポイントは以下です。
- 今後VPCが増える可能性があるか
- 複数AWSアカウントを利用する予定があるか
- オンプレミスとの通信経路を集中管理したいか
- ネットワーク障害時の切り分けを容易にしたいか
短期的にはシンプルな構成でも、数年後にシステム規模が大きくなる場合は、最初からTransit Gatewayを採用することで設計変更を減らせる場合があります。
まとめ
オンプレミス環境と複数VPCを接続する場合、現在のAWS設計ではTransit Gatewayを利用したハブ型構成が一般的な選択肢になっています。
ただし、VPC数が少ない小規模環境ではVirtual Private Gatewayでも十分対応できるため、必ずTransit Gatewayを選ぶ必要があるわけではありません。
重要なのは、現在の構成だけではなく、将来的なVPC追加、運用管理、セキュリティ要件を考慮してネットワーク設計を行うことです。複数VPCとオンプレFWを効率的に管理したい場合は、Transit Gatewayを中心とした構成を検討するとよいでしょう。

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