COATはなぜ「淫夢」関連のネット投稿を全部訴えない?著作権・削除申立て・二次創作の違いから解説

ニコニコ動画

インターネット上では、COAT(コートコーポレーション)の作品『Babylon 34 真夏の夜の淫夢 ~the IMP~』を起点とした、いわゆる「淫夢」関連の動画・画像・音声・MAD・ミームが長年にわたって投稿されています。そのため、「元作品の会社は、なぜ投稿者を片っ端から訴えないのか」と疑問に感じる人もいるでしょう。

結論からいうと、COATが現在なぜ個々の投稿者を提訴していないのか、その経営判断を説明した信頼できる公式声明は確認できません。したがって「黙認している」「宣伝になるから許可している」「訴えるのを諦めた」などと断定することはできません。

一方で、過去にはニコニコ動画で「株式会社コートコーポレーションの申立により、著作権侵害として削除」と表示された淫夢関連動画の記録が残っています。つまり、「何も権利行使したことがない」と考えるのも正確ではありません。この記事では、ネット上の投稿を削除することと、投稿者を裁判で訴えることの違いを中心に整理します。

そもそもCOATと「真夏の夜の淫夢」の関係は?

「真夏の夜の淫夢」と呼ばれるネットミームの元になった作品の一つが、『Babylon 34 真夏の夜の淫夢 ~the IMP~』です。COATのブランドであるBABYLONシリーズの作品として知られています。

元の映像作品と、その映像・音声などを素材として作られたネット上のMADや切り抜き、さらに元映像を直接使わず言葉やネタだけを利用したミームは、同じ「淫夢」と呼ばれていても法的には同じものではありません。

例えば、元作品をそのまま丸ごと無断アップロードするケースと、作品名について文章で論評するケースでは、利用している著作物の内容も利用方法もまったく異なります。そのため「淫夢厨なら全員著作権侵害」と一括りにすることはできません。

過去にはCOAT名義による権利者削除の記録がある

「COATは一度も淫夢関連コンテンツへ対処していない」という理解には注意が必要です。ニコニコ動画では過去に、淫夢関連動画について株式会社コートコーポレーションの申立てによる著作権侵害として削除された記録があります。

例えば過去の記録では、ニコニコ動画の動画ID「sm2507705」が「株式会社コートコーポレーションの申立により、著作権侵害として削除されました」と表示され、対象物として『Babylon 34 真夏の夜の淫夢』が記載されていたとされています。

ただし、古いネット上の削除記録には、申立人表示の正確性について第三者によるなりすましの可能性を指摘する資料もあります。そのため、古い削除表示だけから当時の社内判断や申立ての全容まで断定することは避けるべきです。[参照] 過去の権利者削除に関する記録

「動画を削除させる」と「投稿者を訴える」は別の手続き

この疑問を理解するうえで特に重要なのが、プラットフォームへの削除申立てと民事訴訟を区別することです。YouTubeやニコニコ動画などに権利侵害コンテンツが投稿された場合、権利者側にはプラットフォームの仕組みを利用して削除を求めるという選択肢があります。

一方、投稿者を相手に損害賠償などを求めて民事訴訟を行う場合は別の手続きになります。相手を特定する必要が生じるケースもあり、証拠の確保、弁護士費用、裁判への対応など、削除申立てだけとは負担が異なります。

したがって、ネット上に無断利用と思われるコンテンツが存在しているからといって、権利者が必ず投稿者一人ひとりを裁判で訴えるとは限りません。これはCOATに限らず、著作権を持つ企業全般についていえることです。

著作権侵害があれば必ず裁判になるわけではない

著作権者には著作物についてさまざまな権利がありますが、侵害が疑われる投稿を見つけるたびに訴訟を提起しなければならないという義務があるわけではありません。

実務上は、削除申立て、警告、ライセンス交渉、静観、特に対応しない、悪質なケースについて法的措置を検討するといった複数の選択肢があります。どの方法を選ぶかは権利者の判断です。

例えば数十秒の素材使用と、元の有料作品をほぼそのままアップロードして誰でも視聴できるようにする行為では、権利者側が受ける影響も異なります。そのため対応の優先順位が異なることは十分考えられますが、COATが実際にどの基準で判断しているかは公式情報がない限り分かりません。

ネット上の淫夢コンテンツが非常に多いことも考慮する必要がある

淫夢関連コンテンツは長期間にわたってニコニコ動画、YouTube、SNSなどへ投稿されてきました。元作品そのものに近い転載から、短い音声素材、MAD、イラスト、文章、単なるネットスラングまで内容は多岐にわたります。

このように大量の投稿があるジャンルでは、仮に権利者が積極的に対応するとしても、すべてを発見し、内容を確認し、一件ずつ同じ方法で対処するのは大きな負担になります。

ただし「数が多すぎるからCOATが諦めた」という説明は、COAT自身がそう説明した根拠が確認できない以上、推測にとどまります。ネット上ではもっともらしい理由として語られることがありますが、企業の意思決定として事実認定することはできません。

「長年残っている=公式に許可された」ではない

非常に重要なのが、ある動画が何年間も削除されていないからといって、その利用について権利者から許可を得ているとは限らないことです。

権利者がまだ発見していない、対応の優先順位が低い、プラットフォームへの申立てをしていないなど、コンテンツが残っている理由はいくつも考えられます。外部からその理由を判断することは困難です。

そのため「淫夢動画は昔から大量にあるので自由に転載してよい」「COATは訴えない会社だから問題ない」という結論にはなりません。過去に削除されなかったことは、将来も削除や権利行使が行われないことを保証するものではありません。

「淫夢厨」というだけでは訴訟の対象とはいえない

そもそも「淫夢厨」は法律上の区分ではなく、淫夢関連のネットミームを見たり使用したりする人を指すネット上の俗称です。そのため「COATが淫夢厨を訴える」という表現は、法的には対象が広すぎます。

例えば作品について会話しているだけの人、ネットスラングを使った人、元作品の映像をアップロードした人では行為が異なります。著作権の問題を考える場合には「その人が淫夢界隈にいるか」ではなく、具体的にどの著作物をどのように利用したのかを見る必要があります。

特に、元映像や音声を大量に転載するケースと、元作品そのものを複製していない一般的な言及を同列に扱うことはできません。

出演者の顔や名前に関する問題は著作権だけでは説明できない

淫夢関連コンテンツでは、作品映像だけでなく出演者の顔写真、映像、呼び名、個人情報などが話題になる場合があります。しかし、これらの問題をすべて「COATの著作権」だけで説明することはできません。

映像作品そのものの著作権と、個人のプライバシー、名誉、肖像などに関する問題は別の論点です。また、どの権利を誰が持っているかも対象によって異なります。

特にネットミームをきっかけに一般人や出演者と思われる人物の現在の住所、勤務先、家族などを調べて公開するといった行為は、単なる作品のパロディとは別の深刻な問題につながる可能性があります。

「宣伝になるから黙認している」という説も断定できない

ネット上では「淫夢が有名になったことで元作品や会社も知られるようになったので、宣伝になるから放置しているのでは」という推測も見られます。しかし、これについてもCOATが公式にそう説明した信頼できる情報がなければ事実として扱うことはできません。

権利者が二次創作文化を明示的に認めているケースでは、公式ガイドラインとして「ここまでは利用可能」と公開されることがあります。一方、そのような許諾が確認できない場合、「削除されていない」という事実だけを黙認や許可の証拠にすることはできません。

ネット文化についての記事を書く場合も、「COATは宣伝になるので意図的に泳がせている」といった企業内部の判断を根拠なしに断定しないことが重要です。

「全部訴えれば勝てる」とも単純にはいえない

逆方向の誤解として、「元ネタがCOAT作品なのだから、淫夢関連動画ならCOATが訴えれば全部勝てる」という考え方にも注意が必要です。

著作権問題では、実際に何が使用されているか、どれだけ使用されているか、利用方法は何か、権利を誰が保有しているか、法律上認められる利用に該当しないかなど、個々の事情を確認する必要があります。

例えば元映像をそのままアップロードしたものと、元映像を使用せずネットミームについて解説する文章では事情がまったく違います。「淫夢」という共通の呼び名だけで法的結論を出すことはできません。

現在投稿されているから安全、という判断は避ける

自分でも淫夢関連動画を投稿したいと考えている場合、「他の人もやっている」「何年も削除されていない」という理由だけで著作権上問題ないと判断するのは危険です。

特に市販映像を丸ごとアップロードしたり、長時間の映像・音声をそのまま視聴できる状態にしたりする行為については、単なるネットミームへの参加とは分けて考える必要があります。

作品を紹介・批評する目的がある場合でも、日本の著作権法上の「引用」には条件があります。「引用と書いておけば何でも使用できる」という仕組みではないため、必要であれば文化庁などの公的な著作権情報を確認するのが安全です。[参照] 文化庁・著作権

まとめ:COATが訴えない理由は公式情報がない以上断定できない

COATが淫夢関連の投稿者をなぜ大規模に提訴していないのかについて、「これが理由だ」と断定できるCOATの公式説明は確認できません。そのため、「宣伝になるから」「完全に黙認しているから」「数が多すぎて諦めたから」といった説は、根拠が示されない限り推測として扱う必要があります。

また、過去にはニコニコ動画で株式会社コートコーポレーション名義の著作権侵害申立てによって淫夢関連動画が削除されたとする記録があります。そのため、「COATは昔から一切権利行使していない」という説明も正確ではありません。

さらに、動画の削除申立てと投稿者への訴訟は別物です。権利者は必ず裁判を起こさなければならないわけではなく、削除申立てなど別の方法を選ぶこともできます。逆に、現在削除されず残っているコンテンツが公式に許可されたという意味にもなりません。

結局のところ、「淫夢厨をなぜ訴えないのか」と一括りに考えるより、元作品の無断転載、MAD・二次創作、単なる言及やネットスラングなどを分けて考えることが重要です。COAT内部の方針が公表されていない部分については推測で補わず、確認できる削除記録と一般的な著作権の仕組みを分けて理解するのが最も正確です。

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