プロ野球の歴代スピードスターを語るとき、1980年代の大洋ホエールズで活躍した屋鋪要氏と、福岡ソフトバンクホークスの周東佑京選手はどちらも名前が挙がる存在です。「50mを同じ条件で走ったらどちらが速いのか」と気になるところですが、結論からいうと、公表されている数字だけを単純比較して勝者を断定するのは難しいです。
周東選手については50m走5秒7という数字が複数の野球メディアで紹介されています。一方、屋鋪氏は本人が100mのベストについて11秒1程度だったと語っており、別資料では10秒9という記録も紹介されていますが、50mについて周東選手と同じように比較できる信頼性の高い公表タイムを確認するのが難しいためです。
さらに、野球選手の「50m○秒」という数字は陸上競技の公式レース記録とは性質が異なる場合があります。計測方法やスタート条件が統一されていなければ、0.1秒単位の数字だけで世代を超えた優劣を決めることはできません。そこで、確認できる記録と実際の野球での走力を分けて比較します。
周東佑京の50m走は5秒7と紹介されている
周東佑京選手の足の速さを示す代表的な数字が50m走5秒7です。ソフトバンク入団当初を紹介したSportivaの記事では、スカウト評として「50m5秒7の俊足」と紹介され、一塁到達も3秒8を記録していたとされています。[参照] Sportiva・周東佑京の快足について
Full-Countでも周東選手について「50メートル走で5秒7」と紹介されています。実際に周東選手はプロ入り後も代走や盗塁で圧倒的なスピードを発揮し、単なる自己申告上の俊足ではなく、試合で足を大きな武器にしてきました。[参照] Full-Count・周東の50m走と走力
スポーツナビのパ・リーグ公式記事でも50m5.7秒として紹介されており、単純に50mを平均すると秒速約8.8mに相当します。もちろん実際にはスタートから加速するため、50mをずっと同じ速度で走っているわけではありません。[参照] スポーツナビ・周東のスピード
屋鋪要は100m11秒1という本人証言がある
一方の屋鋪要氏は、大洋時代に高木豊氏、加藤博一氏と「スーパーカートリオ」を形成したことで知られる歴史的な俊足選手です。1986年から1988年には3年連続で盗塁王を獲得しています。
屋鋪氏はFull-Countのインタビューで、現役当時に行われていたプロ野球選手の運動会では100m走で敵なしだったと振り返っています。そして自身のベストタイムについて「11秒1くらい」だったと語っています。記事では、陸上競技用スパイクではない条件での数字としてその速さを評価しています。[参照] Full-Count・屋鋪要インタビュー
また、別の資料では屋鋪氏が100m10秒9を出したとする記録も紹介されています。ただし、こうした野球選手の過去の走力データは、陸上競技の公認記録と同じ条件で管理された数字とは限りません。そのため、10秒9と11秒1のどちらか一方だけを絶対的な記録として扱うより、屋鋪氏が100mを11秒前後で走るほど非常に速い選手だったと捉える方が適切です。
屋鋪要の50mタイムは単純には比較できない
周東選手には「50m5秒7」という広く紹介されている数字がありますが、屋鋪氏については今回確認した信頼できる資料の範囲では、周東選手と直接比較できる形の50m公式タイムを確認できませんでした。
ここで「屋鋪は100m11秒1だから50mなら5.55秒」と計算するのは誤りです。短距離走では静止状態から加速する時間があるため、100mのタイムを単純に半分にして50mのタイムにはできません。
例えば100mを11秒で走る選手でも、最初の50mと後半50mでは条件が違います。後半はすでにトップスピード付近まで加速しているため、一般的に後半50mの方が速くなります。したがって100m記録から正確な50mタイムを逆算することはできません。
当時の選手から見ても屋鋪の直線スピードは別格だった
屋鋪氏の速さを知るうえでは、タイムだけでなく同時代に対戦した選手の証言も参考になります。元ヤクルトの八重樫幸雄氏は、スーパーカートリオについて振り返ったSportivaのインタビューで、タイムだけなら3人の中で屋鋪氏が最も速かったのではないかと述べ、直線や加速後のスピードを高く評価しています。[参照] Sportiva・スーパーカートリオの走力比較
さらに100m11秒1だった元ヤクルトの青木実氏も、現役時代の俊足選手について「自分より速いと思ったのは屋鋪要だけ」と振り返っています。[参照] 週刊ベースボールONLINE・青木実氏の証言
つまり屋鋪氏は「昔の選手だから速かったことになっている」のではなく、実際に当時の俊足選手たちから見ても突出したスピードを持っていたことが分かります。
周東も現代プロ野球を代表するスピードスター
周東選手も数字だけで評価されているわけではありません。2019年には50m5秒7の快足を評価され、侍ジャパンのトップチームへ選出されています。当時の稲葉篤紀監督も、終盤の1点を取るための「スピード」を周東選手の大きな価値として評価していました。[参照] Full-Count・侍ジャパン選出時の評価
その後も周東選手はプロ野球で盗塁を重ね、2020年には50盗塁で盗塁王を獲得しています。WBCでも代走として世界的に注目される走塁を見せたため、現代のNPBを代表する俊足選手であることに異論は少ないでしょう。
屋鋪氏が1980年代を代表する「スピードスター」なら、周東選手は現代を代表する「スピードスター」です。世代の異なる両者が比較されること自体、それぞれの速さが突出している証拠ともいえます。
50m5秒7という数字を陸上の公式記録と直接比較してはいけない
野球選手の50mタイムを見る際に注意したいのが計測方法です。野球のプロフィールで紹介される50mタイムは、陸上競技大会の公認50m走と同一条件とは限りません。手動計測か自動計測か、スタートの合図をどのように取るか、走路やシューズなどによって数字は変わります。
そのため「周東の5秒7は陸上選手の公式記録と同じだから、陸上日本トップクラスと完全に同じ」という比較は適切ではありません。これは周東選手だけの問題ではなく、プロ野球選手の「50m○秒」というプロフィール全般にいえる注意点です。
屋鋪氏の過去の100m記録についても同様で、現代の陸上競技で使用される写真判定・完全自動計時による公認記録と同列に扱うことはできません。世代をまたいで比較するなら、計測条件の違いを考慮する必要があります。
50m走の速さと盗塁のうまさは同じではない
野球では「50mが速い=必ず盗塁も最強」とは限りません。盗塁では純粋な走力に加えて、投手のモーションを読む力、リード、スタート、加速、スライディングなどが影響します。
屋鋪氏について八重樫氏は、直線的な速さでは非常に高く評価する一方、盗塁技術についてはスーパーカートリオの他の選手との違いも指摘しています。つまり「陸上のようにまっすぐ走ったとき誰が速いか」と「野球で誰が優れた走者か」は別の比較になります。
周東選手についても、50m5秒7という基礎的な走力だけではなく、一塁到達の速さや盗塁時のスタート、ベースランニングまで含めて実戦で大きな武器になっています。野球選手として足を比較する場合には、この実戦的な部分も重要です。
結局、屋鋪要と周東佑京はどちらが50mで速いのか
確認できる数字だけを見るなら、周東佑京選手には50m5秒7という明確に紹介されているタイムがあります。一方、屋鋪要氏については100m11秒1程度という本人証言などはありますが、同じ条件で比較できる50mタイムが確認できません。
したがって「50mでは屋鋪が○秒、周東が5.7秒だからこちらが勝ち」といった確定的な比較はできません。まして、100m11秒1を半分にして屋鋪氏の50mを5.55秒とする計算は正しくありません。
本当に決着をつけるには、両者が同じ年齢・同じコンディションで、同じ走路、同じスタート方式、同じ計測機器を使って50mを走る必要があります。現実には世代が約30年以上離れているため、その比較は不可能です。
実戦成績で見ると両者とも歴代屈指の俊足
屋鋪氏は1986年から1988年まで3年連続で盗塁王となり、1985年には高木豊氏、加藤博一氏とともに大洋の「スーパーカートリオ」として球界を沸かせました。1985年は屋鋪氏だけで58盗塁を記録しています。
周東選手も2020年に50盗塁を記録して盗塁王となるなど、現代野球で突出した走力を実績へ結び付けています。また、単純な盗塁数だけでなく内野ゴロを安打にする一塁到達や、一気に本塁まで生還するベースランニングでも速さを発揮しています。
盗塁数は出場機会、打順、出塁率、時代ごとの戦術などにも左右されるため、数字だけでどちらが速いかは判断できません。しかし、屋鋪氏と周東選手がそれぞれの時代を代表する「足で試合を変えられる選手」だったことは共通しています。
まとめ:50mの直接対決は判定不能、周東は5秒7・屋鋪は100m11秒1前後の記録が残る
大洋ホエールズで活躍した屋鋪要氏とソフトバンクの周東佑京選手について、50m走の速さを公表資料から比較すると、周東選手には50m5秒7という数字が複数の野球メディアで紹介されています。
屋鋪氏については本人が100mのベストを11秒1程度と語っており、別資料には10秒9という記録も見られます。また、同時代の俊足選手からも直線的な速さを非常に高く評価されていました。しかし、周東選手の5秒7と直接比較できる同条件の50m記録は確認できません。
したがって現存する資料からの結論は、「50m走で屋鋪要と周東佑京のどちらが速いかは断定できない」となります。周東選手を5秒7、屋鋪氏を100m11秒1という別条件の数字だけで順位付けするのは適切ではありません。
ただし、屋鋪氏は1980年代、周東選手は現代を代表する球界屈指のスピードスターです。「もし全盛期の2人を同じ条件で50m走らせたら」という比較は、数字だけでは答えの出ない非常に興味深い歴代選手比較といえるでしょう。


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