Internet Explorer 9(IE9)のWeb標準対応について調べると、Acid3テストの結果として「95/100」と書かれている資料と「100/100」と書かれている資料の両方が見つかることがあります。一見するとどちらかが間違っているように思えますが、これは主にAcid3テストそのものが2011年9月に変更されたことによって生じる違いです。
結論を先に整理すると、IE9は当初のAcid3テストでは95/100であり、2011年9月に一部テスト項目が除外された後のAcid3では100/100になりました。したがって、「IE9のAcid3スコアは95/100だった」という説明は、変更前のテストを指しているのであれば正しいといえます。
この記事では、IE9が95点だった時期、なぜ残り5点を獲得できなかったのか、その後100点になった理由まで、IE9の開発経緯とAcid3の変更を時系列で整理します。
- Internet Explorer 9は当初Acid3で95/100だった
- IE9のAcid3スコアは開発中に55点から95点まで上昇した
- なぜIE9は残り5点を取らなかったのか
- Acid3とは何を調べるテストだったのか
- 2011年9月にAcid3テスト自体が変更された
- IE9が100/100になったのはブラウザが更新されたからではない
- 「IE9は95/100」と「IE9は100/100」はどちらも条件次第で正しい
- Internet Explorer 9正式版が登場した時期
- Acid3で100点でもすべての表示が完全だったわけではない
- IE8からIE9ではWeb標準対応が大きく進歩した
- 古いベンチマーク結果を調べるときは測定日も重要
- まとめ:IE9は変更前のAcid3では95/100、変更後は100/100
Internet Explorer 9は当初Acid3で95/100だった
Internet Explorer 9の開発中、Microsoftは複数回にわたって「Platform Preview」と呼ばれる開発者向けプレビュー版を公開していました。2010年8月4日に登場したInternet Explorer 9 Platform Preview 4では、Acid3のスコアが95/100まで向上しています。
当時の報道でも、IE9 Platform Preview 4がAcid3で95点を獲得したことが確認できます。例えば2010年8月のTechRadarの記事では、IE9の最新Acid3スコアが95になったことが報じられています。[参照] TechRadar:How IE9 is passing the Acid test
Ars Technicaも同時期のPlatform Preview 4について、Acid3で95/100を獲得したと報じています。[参照] Ars Technica:Inside the final Internet Explorer 9 Platform Preview
IE9のAcid3スコアは開発中に55点から95点まで上昇した
IE9が最初から95点だったわけではありません。開発初期のPlatform Previewではスコアが低く、その後Web標準への対応が進むにつれて大きく上昇しています。
| IE9開発版 | 公開時期 | Acid3スコア |
|---|---|---|
| Platform Preview 1 | 2010年3月 | 55/100 |
| Platform Preview 2 | 2010年5月 | 68/100 |
| Platform Preview 3 | 2010年6月 | 83/100 |
| Platform Preview 4 | 2010年8月 | 95/100 |
つまりIE9では、わずか数カ月の間に55点から68点、83点、95点へとスコアが伸びています。これはMicrosoftがIE9でCSS3、SVGなど当時のWeb標準への対応を大幅に進めていた時期と重なります。
特にIE8のAcid3スコアは20/100だったため、IE9の95/100はInternet Explorerシリーズにとって非常に大きな改善でした。
なぜIE9は残り5点を取らなかったのか
変更前のAcid3でIE9が100点にならなかった理由として重要なのが、SVG FontsとSMIL Animationへの対応です。
2010年当時の報道によると、IE9が失敗していた残りのテストはSVG仕様に関連するものでした。Microsoftは、これらの仕様が移行・検討段階にあることなどを理由に実装しない方針を示していました。
TechRadarは当時、残り5点を得るためにはSMILとSVG Fontsという2つの機能への対応が必要になると説明しています。Ars Technicaも、IE9が失敗する5つのテストはSVG FontsとSVG SMIL Animationに関連すると報じています。[参照] TechRadar [参照] Ars Technica
Acid3とは何を調べるテストだったのか
Acid3は、Webブラウザが当時のWeb関連仕様をどの程度正しく処理できるかを確認するために作られたテストページです。JavaScript、DOM、CSS、SVGなど複数のWeb技術に関係する100個のテストで構成され、結果が0から100までのスコアとして表示されました。
そのため「100/100ならすべてのWeb標準へ完全対応している」「95/100ならWeb標準への対応率が95%」という単純な意味ではありません。Acid3で選ばれた特定のテストケースをどれだけ通過したかを示す数字です。
ブラウザ全体の標準準拠性、互換性、速度、セキュリティ、実際のWebサイトでの表示品質などを、Acid3の数字だけで評価することはできません。
2011年9月にAcid3テスト自体が変更された
IE9のスコアを理解するうえで最も重要なのが、2011年9月にAcid3の内容が変更されたことです。
Acid3の一部には、将来的に仕様が変更される可能性のある機能を要求しているテストが含まれていました。そのため2011年9月17日、仕様変更の妨げになり得る一部のテストがコメントアウトされました。
この変更によって、従来95/100だったInternet Explorer 9と、それまで100点ではなかったFirefox 4なども100/100を獲得するようになりました。
IE9が100/100になったのはブラウザが更新されたからではない
ここは誤解されやすいポイントです。IE9について「最初は95点だったが、アップデートによって残りの機能に対応して100点になった」と理解すると正確ではありません。
大きなポイントはIE9側ではなく、Acid3側のテスト内容が変更されたことです。
従来IE9が通過できなかった項目の一部がテスト対象から外れた結果、同じIE9でも変更後のAcid3では100/100を表示できるようになりました。そのため、資料の作成時期や使用されたAcid3のバージョンによって「IE9=95点」と「IE9=100点」という2種類の記録が存在します。
「IE9は95/100」と「IE9は100/100」はどちらも条件次第で正しい
IE9のAcid3スコアについて資料を読む場合は、数字だけでなくいつのAcid3で測定したものなのかを見る必要があります。
| 条件 | IE9のAcid3スコア | 理由 |
|---|---|---|
| 2011年9月の変更前のAcid3 | 95/100 | SVG Fonts・SMIL関連の一部テストを通過しなかった |
| 2011年9月の変更後のAcid3 | 100/100 | 仕様変更の可能性がある一部テストが除外された |
したがって、2010年やIE9発売当時のニュース記事で「95/100」と書かれていても誤記とは限りません。むしろ当時実行されていたAcid3では95点だったという歴史的な記録です。
一方、後年の環境でAcid3を実行した結果や、変更後のテストを基準にした資料では100/100と記録されることがあります。
Internet Explorer 9正式版が登場した時期
Internet Explorer 9の正式版(RTM、ビルド9.0.8112.16421)は2011年3月に公開されました。これはAcid3が変更された2011年9月より約半年早い時期です。
つまり、IE9正式版登場時点では従来版のAcid3が使われていたため、歴史的にIE9のスコアとして95/100が広く記録されたわけです。
その後Acid3が変更されたことで、IE9そのものを大幅に作り直さなくても100/100という結果になりました。この時系列を押さえておけば、異なる資料に異なるスコアが掲載されている理由が分かります。
Acid3で100点でもすべての表示が完全だったわけではない
変更後のAcid3でIE9は100/100になりましたが、100点という数字だけで「Acid3の期待する表示を完全に再現した」と考えるのも注意が必要です。
変更後のAcid3に関する記録では、IE9は100/100を獲得した一方、当時CSSのtext-shadowをサポートしていなかったため、テストページの見た目について完全なレンダリングではなかったことも指摘されています。
これは、ベンチマークの数値と実際の機能対応を分けて考える必要がある好例です。ブラウザの性能や標準対応を評価するときは、単一のテスト結果だけではなく個々のWeb APIやCSS機能への対応状況を見ることが重要です。
IE8からIE9ではWeb標準対応が大きく進歩した
Acid3の点数そのもの以上に注目すべきなのは、Internet Explorer 8から9への変化です。IE8はAcid3で20/100程度でしたが、IE9世代では95/100まで伸びました。
IE9ではHTML5のvideo、audio、canvasをはじめ、SVG、CSS3の一部、WOFFなど当時普及し始めていたWeb技術への対応が進められました。また新しいJavaScriptエンジン「Chakra」も導入されています。
Web制作者にとってIEは長年、他のブラウザとは異なる挙動への個別対応が必要になるケースが多いブラウザでした。その意味でもIE9はMicrosoftがWeb標準への対応を大きく進めた世代として位置付けられます。
古いベンチマーク結果を調べるときは測定日も重要
Acid3のようにテスト自体が後から変更されたベンチマークでは、「ブラウザ名+点数」だけを記録すると後から混乱することがあります。
例えば「Internet Explorer 9:100/100」とだけ書くと、2011年3月の発売時点から100点だったようにも読めます。一方「IE9:95/100」とだけ書くと、現在残っている変更後のAcid3結果と食い違って見える場合があります。
歴史資料として正確に表現するなら、「IE9は変更前のAcid3で95/100、2011年9月にテスト内容が変更された後は100/100」と書くのが最も誤解が少ないでしょう。
まとめ:IE9は変更前のAcid3では95/100、変更後は100/100
Internet Explorer 9のAcid3スコアについて「95/100だった」という情報は正しい記録です。IE9 Platform Preview 4は2010年8月の時点で95/100に到達し、IE9正式版でも当初のAcid3では100点にはなりませんでした。
残りのテストにはSVG FontsやSMIL Animationなどが関係しており、Microsoftは当時、それらの仕様の状況などを理由に対応しない方針を示していました。
その後、2011年9月にAcid3側で仕様変更の可能性がある一部テストが除外されました。その結果、Internet Explorer 9は変更後のAcid3では100/100を獲得するようになりました。
したがってIE9のAcid3について調べる際は、「95点と100点のどちらが正しいのか」ではなく、「どの時点のAcid3を基準にしているか」を確認することが重要です。発売当時・変更前のスコアを尋ねるのであれば95/100、2011年9月のテスト変更後なら100/100と整理できます。


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